『モナ・リザ』ってこんなに小さいの?

 大学の卒業旅行で訪れたルーブル美術館。世界で最も有名な絵画を前にして、私は美しさと共に、そのサイズに驚かされた。小さな額縁の中で微笑む彼女は、観る角度を変えても、見つめ返してくるような不思議な魅力があり、訪れる人々を次々に魅了していた。一方、オランジュリー美術館で、壁いっぱいに広がるモネの『睡蓮』を観たときは、そのスケールに圧倒された。近づいてみると、カラフルな絵の具の点々の集合にしか見えないのに、離れてみると、静かな世界がどこまでも広がっているように思えた。どちらも図工・美術の教科書やメディアを通して「知っている」つもりだった作品だが、本物を目の当たりにすると、長い時代多くの人に愛されているだけのエネルギーのようなものがひしひしと伝わってきた。

モナ・リザ

 多種多様な情報にあふれているこの時代、インターネットでちょっと検索すれば、世界的な名画でも簡単に「見ること」ができる。しかし、モニターの映し出す画像には限界があり、塗り重ねられた絵の具の凹凸、透明感や質感などは伝わりにくい。立体作品ならなおさらである。そんな便利な時代だからこそ、「知っているつもり」になっている子どもたちに、本物の芸術に触れ合う機会を増やしたい。

 静岡市には、様々な企画展を定期的に催している県立美術館や市立美術館などがあり、鑑賞教育には恵まれた環境であるといえる。 しかし、子どもたちにとって、美術館は敷居の高い場所というイメージがぬぐえない。学校のカリキュラムに美術館での鑑賞会を組み込むことも、容易なことではない。では、子どもたちに芸術へ興味をもってもらうにはどうすればいいのか。

ワークショップ

 私は、まずは「美術は高尚なもの、難しい」ではなく、「美術っておもしろい」 と、魅力を伝えることが第一歩であると思う。美術館は、「美術に興味ある人だけが集まる場所」ではなく、「美術の魅力を発信していく場所」として、小学生でも楽しめる体験型のワークショップや、展示中の企画展に合わせた出張ミニ美術館を作って学校訪問するなど、発信型の企画が増えていけば、美術館がもっと身近な存在になるのではないかと思う。芸術に触れ合い、興味をもった子どもたちが、大人になっても、好きでい続けていてくれることを願ってやまない。